特定技能外国人を自社に雇用する際の給与についてどのように設定すべきか、疑問をお持ちの企業のご担当者もいるのではないでしょうか?
給与に関しては、トラブルの起こるきっかけとなりやすいため、気を付けたいポイントです。本記事では、特定技能の給与事情から知っておくべき法規制・注意点を解説します。外国人労働者を雇用予定の企業のご担当者はぜひ参考にしてみてください。
特定技能の給与事情
厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、外国人労働者の賃金は 248.4千円で、在留資格区分別にみると、専門的・技術的分野(特定技能を除く)299.6千円、特定技能 205.7千円、身分に基づくもの 280.7千円、技能実習 177.8千円、その他(特定活動及び留学以外の資格外活動)220.9千円となっています。
特定技能については、前年比+ 5.5%となっており、微増という結果となっています。外国人労働者の受け入れが増えてきている社会情勢に伴い、賃金も徐々に変化してきていることが示唆されます。
本記事では、外国人労働者の中でも、特定技能外国人の給与に焦点を当て解説します。
特定技能の給与に関する法規制
特定技能の給与に関する主な法規制について解説します。初めて特定技能外国人を雇用を検討する企業担当者は理解を深めておきましょう。
特定技能運用要領
特定技能制度は、出入国管理庁によって運用ルールが定められています。運用要領の中の給与に関する記載に、「外国人の報酬額が日本人と同等額以上であることを含め所要の基準に適合していることが求められ、特定技能所属機関自身についても、特定技能雇用契約の適正な履行が確保されるものとして所要の基準に適合していることが求められます。」と定められています。
運用要領の遵守および、次に紹介する労働基準法についても把握しておくことが大切です。
労働基準法
労働基準法は、日本人だけでなく日本で働く外国人にも適用されます。労働基準法第3条には、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と定められています。
均等待遇の原則と称されますが、外国人労働者であるが故に、安い賃金で雇用することは違法です。基本的には、同一職種・職位の日本人社員と同程度の賃金設定にする必要があるでしょう。
特定技能の給与の決め方
特定技能外国人の給与の決め方ですが、規定の水準や相場が定められているわけではありません。基本的には、自社の給与規定に沿った日本人と同程度の給与を設定することになるでしょう。
ここでは、「賃金規定がある場合」と「賃金規定がない場合」の給与の決め方について解説します。
賃金規定がある場合
自社に給与規定がある場合は、規定に沿って特定技能外国人の給与を設定する形で問題ありません。特定技能人材の条件と自社の給与規定が合致する給与を設定しましょう。
年齢を考慮するか否かについて、定めのない場合は特に考慮しなくても問題ありません。
賃金規定がない場合
給与規定のない場合は、モデルケースとなる日本人労働者と比較しましょう。年齢、スキルセット、職務内容、職位などを比較検討しつつ、同程度の給与を設定することが求められます。
モデルケースとなる人材がいない場合には、雇用予定の特定技能人材に類似する人材と比較しつつ、申請時に合理的に説明できるようにすることが重要です。
特定技能の給与に関する注意点
特定技能外国人の給与設定時には、いくつか注意すべきポイントもあります。
- 最低賃金を下回っていないか
- 割増賃金を遵守できているか
- 控除の説明をしているか
一定の状況下で発生する賃金や、税金面について知っておくべきことを解説します。
最低賃金を下回っていないか
給与を決める際に遵守すべきことに最低賃金制度があります。労働者に支払わなければならない最低の賃金額で最低賃金法という法律で定められています。最低賃金には2種類あり、「地域別最低賃金」、「特定最低賃金」のうち、高い方の最低賃金額以上の給与を支払う必要があります。
最低賃金以下の給与となっている場合には、労働基準法による罰則が定められています。また、特定技能外国人の場合は、受け入れの停止となる可能性があるため注意しましょう。
割増賃金を遵守できているか
特定技能外国人が特定の状況下で業務を行った場合、日本人社員と同様に割増賃金が適用されます。
- 深夜業務(午後10時〜午前5時まで)は25%以上
- 時間外労働は25%以上
- 休日出勤は35%以上
割増賃金をきちんと支払えるように、社員の打刻管理を徹底することが大切です。
控除の説明をしているか
給与控除についても特定技能外国人に説明しておきましょう。日本の雇用条件には外国人も理解が浅いため、不明点を解決しながら納得できるようなサポートをする必要があります。また、外国人労働者の中には、家族が母国で生活をしており、扶養控除について相談があり、対応が求められることもあります。事前に控除についても理解を深めておきましょう。
▼外国人労働者の扶養控除についてはこちら
外国人の扶養控除はどうする?条件や方法、受け入れ企業の対応について解説!
特定技能の平均給与
特定技能外国人の平均給与は冒頭に紹介した通り、205.7千円となっており、平均で18万円~21万円/月で求人を掲載していることが多いです。職種や地域によっても給与が変わるため、給与をこれから決める企業は、相場感を把握しておくとよいでしょう。
技能実習よりも特定技能の方が給与相場が高い理由としては、将来的に期待されていることの表れでしょう。技能実習は一定期間、母国に日本の技術を持ち帰ることを目的とし、所定の期間が過ぎると帰国しなけばなりませんが、特定技能制度は、即戦力となる人材の雇用を目的に創設されています。
特定技能の業種拡大が進んでいる状況も考慮すると、今後さらに特定技能の雇用が安定するような制度が整えられていく可能性もあるでしょう。
給与交渉を受けた場合の対応
雇用した特定技能外国人から給与を上げて欲しいと交渉された場合は、双方が合意できるように十分に話し合いましょう。企業が断り続けていると、モチベーションが低下してしまったり、転職してしまったりするリスクとなります。一方で一度昇給させてしまうと、その後も給与交渉を持ちかけられる可能性もあります。
トラブルを避けるためにも、明確な給与基準や昇給基準を設定し、伝えておくことが大切です。また登録支援機関と協力し合いながら、人材の教育に注力することも忘れてはいけません。
雇用者と企業の合意のもとトラブルにならない給与設定を!
雇用される特定技能外国人の給与は、日本人社員と同じ雇用契約にて設定しなければなりません。トラブルにならないように基準に基づき、双方が合意できるよう、合理的に給与を決定する必要があります。
適切な給与を設定し、適宜、必要に応じて給与を見直していくことが、安定的な外国人雇用につながるでしょう。
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