特定技能外国人の受け入れがスタートして、これから外国人の採用に注力したい企業や優秀な人材を確保したい企業からの注目度が高まってきている一方で、外国人の受け入れる流れや手順が分からず、中々行動に移せない方も多いのではないでしょうか?
本記事では、特定技能「建設」に焦点を当て、概要や受け入れ条件、成功するために必要なポイントについて解説します。建設分野の特定技能人材に求められているスキルや企業側が整備する必要がある受け入れ体制について知っておくべき情報をお届けします。
特定技能「建設」について
特定技能制度は2019年に創設され、全12分野で外国人が日本で働けるようになっています。特定技能は外国人の技能レベルに応じて、特定技能1号と特定技能2号に分類されます。
またこれまでの特定技能2号の対象分野は、「建設」および「造船・舶用工業」の2分野でしたが、2023年から「介護」分野以外の11分野に対象が拡大。建設分野においては、特定技能1号と特定技能2号の両方が設定されており、すでに認定を受けた方もいます。
特定技能「建設」の創設背景
日本ではこれまでに深刻な人手不足が問題となってきました。建設業界においても労働人口が減少傾向にあった中で、専門性や技能を有する特定技能外国人制度が構築されました。
特定技能「建設」の現状
建設業は他の業種と比べると、労働環境が過酷であることや、昔ながらの労働で若者から好まれないこともあり、技能実習生が失踪してしまうことが多いです。そこで特定技能外国人の受け入れにおいては、在留資格を申請する前に、受入計画を作成することや、雇用後も定期的に就労状況を報告することを義務付けています。
特定技能「建設」で受け入れ可能な職種
- 土木区分
- 建築区分
- ライフライン・設備区分
これまで建設分野の業務区分は、19区分(18試験区分)に分かれていましたが、特定の技能資格を取得しても、他の業務に活用できなかったり技能実習と特定技能資格の整合性が取れいていなかったりなど、課題を抱える状況でした。
2022年の再編に伴い、上記の「土木区分」、「建築区分」、「ライフライン・設備区分」の3つに統合されました。特定技能1号および2号に共通する業務を紹介します。
土木区分
土木区分の主な職種は以下の通りです。
▼職種一覧
- 型枠施工
- コンクリート圧送
- トンネル推進工
- 建設機械施工
- 土工
- 鉄筋施工
- とび
- 海洋土木工
指導者の指導や監督を受け、土木施設の新設、改築、維持、修繕に従事する仕事が該当します。
建築区分
建築区分の主な職種は以下の通りです。
▼職種一覧
- 型枠施工
- 左官
- コンクリート圧送
- 屋根ふき
- 土工
- 鉄筋施工
- 鉄筋継手
- 内装仕上げ
- 表装
- とび
- 建築大工
- 建築板金
- 吹付ウレタン断熱
指導者の指導・監督を受け、建築物の新築、増築、改築、および移転や修繕の際にかかる模様替えなどに従事する業務が該当します。
ライフライン・設備区分
▼職種一覧
- 電気通信
- 配管
- 建築板金
- 保温保冷
指導者の指示・監督を受け、電気通信、ガス、水道、電気、その他のライフライン・設備の整備・設置、変更または修理作業などに従事する業務が該当します。
特定技能「建設」を取得する条件
特定技能「建設」を取得する条件について解説します。採用企業は外国人人材が資格を取得できる見込みがあるのかを判断するうえで、条件を正確に把握しておく必要があるでしょう。
特定技能1号「建設」
特定技能1号「建設」を取得するためには、特定技能評価試験と日本語試験に合格する必要があります。特定技能評価試験は、国土交通省が定める「建設分野特定技能1号評価試験」取得要件となります。
日本語試験は、「N4以上の日本語能力試験」または、「国際交流基金日本語基礎テスト」のどちらかに合格することが取得要件となります。
また、建設分野の技能実習2号を持っている場合は、移行可能です。技能実習2号は1993年に創設された技能実習制度における在留資格ですが、特定技能制度が構築されたことにより試験免除で移行できるようになりました。移行可能な要件は以下の通りです。
▼必要要件
- 技能実習2号を良好に修了する
- 技能実習での職種/作業内容と、特定技能1号の区分が一致する
特定技能2号「建設」
特定技能2号のある業種について、これまでは「造船」「建設」の2業種のみとなっていましたが、2023年6月の変更で「ビルクリーニング」、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」、「自動車整備」、「航空」、「宿泊」、「農業」、「漁業」、「飲食料品製造業」、「外食業」の9分野と、造船・舶用工業分野のうち溶接区分以外の業務区分全てを新たに特定技能2号の対象となります。
特定技能2号を取得するためには、1号からの移行をする必要があります。
取得要件を以下にまとめます。
▼必要要件
- 建設分野特定技能2号評価試験または、技能検定1級に合格する
- 班長としての一定の実務経験を有すること
※班長:建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者
特定技能2号に合格することで、在留期間の更新無期限や扶養家族の帯同が可能となります。
特定技能1号と2号の違い
特定技能1号と2号の違いは、1号が業務の基礎的な知識や経験が求められるのに対し、2号はより専門的な技能が求められることです。
その他、以下の違いがあります。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
日本語試験 | 有り | なし |
家族の帯同 | 不可 | 可能(条件付き) |
在留期間の更新 | 4か月・6か月・1年ごとの更新 (通算5年間) | 6ヶ月・1年・3年ごとの更新 (更新制限なし) |
支援計画の策定 | 必須 | 不要 |
試験の実施状況 | 実施中 | 2024年度以降に開始予定 |
特定技能と技能実習の違い
特定技能と技能実習は一見類似する点も有りますが、制度の目的が異なります。特定技能は、日本の労働力不足を補う制度ですが、技能実習は、習得した技術を母国へ持ち帰ってもらうことを目的とした制度です。
また、技能実習は、高度な技術や技能の習得を目的としているため、単純労働をさせることができません。特定技能においても単純労働のみに従事させることができないことも特徴として理解しておきましょう。
特定技能「建設」に該当する人材を採用する企業に求められる要件
- 一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の登録
- 建設キャリアアップシステムへの登録
- 雇用条件・労働環境の整備
ここからは特定技能外国人の採用を検討する企業に焦点を当て、受け入れる企業に求められる要件について解説します。
建設分野において、特定技能外国人を受け入れる際には、国土交通省に「建設特定技能受入計画」の認定を受ける必要があります。
一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の登録
特定技能人材を受け入れる企業は、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)に加入している必要があります。
JACには直接的または、間接的に加入する方法の2種類あります。直接加入すると正会員、JACに加入する団体に加入すると賛助会員となる方法があります。費用面の負担の少ない賛助会員を選ぶ企業が多いです。
建設キャリアアップシステムへの登録
建設キャリアアップシステムへの登録も特定技能外国人の受け入れの際の要件となっています。建設キャリアアップシステムは、技能者の就業実績や資格を登録するシステムで、し、技能の公正な評価、工事の品質向上、現場作業の効率化などにつなげることを目的としています。
このシステムは、受入企業および外国人人材の双方の登録が必須です。
雇用条件・労働環境の整備
特定技能外国人を受け入れるにあたって、企業は、同一技能の日本人と同等額以上の賃金を支払うことや外国人労働者数が常勤職員数を超えないことなどが条件となります。
その他、受入企業は建設業の認可を取得していることも必須で、余裕を持って受け入れ準備を進めることが大切です。
特定技能「建設」を満たす人材を受け入れる費用
特定技能「建設」を満たす人材を受け入れる費用について、ここでは一般的にかかる費用および費目について紹介します。
- 人材紹介手数料:10万円〜30万円
- 出入国在留管理局への申請費用:10万円〜20万円
- JAC年会費:24万円(賛助会員)
- JAC受入負担金:1万円〜2万円/月額
- 建設キャリアアップシステム登録費用:2,500円(簡略型)
- 登録支援機関への委託費用:1万円〜3万円/月額
1人の特定技能外国人の受け入れにあたり、数十万円がかかることを見込んでおきましょう。費用を抑えたい場合には、自社で採用活動を行ったり、支援業務を行うことで、外部委託費を削減できる可能性があります。
特定技能「建設」に該当する人材を雇用する際の留意点
建設分野の特定技能外国人を雇用する際に留意すべきことを紹介します。まず、建設業においては、民間の有料職業紹介企業からの人材紹介は禁止されています。JAC経由での人材紹介をもとに、人材の採用を進めなくてはなりません。
また建設分野における特定技能人材を雇用した場合には、雇用した後にいくつか手続きが必要です。
- FITS(国際建設技能振興機構)が実施する受入後講習を受講する(雇用後3ヶ月以内)
- 国土交通省に受け入れ報告を行う
- 年4回の定期報告を行う
雇用した後も気を抜かずに、社員となった特定技能外国人とコミュニケーションを図りながら、手続きを進めていきましょう。
建設分野で特定技能外国人の雇用を活かしましょう!
建設分野における特定技能外国人の雇用について解説しました。一般的な外国人受け入れの手順とは異なり、複雑な手続きが必要ですが、海外の優秀な人材を雇うことで、労働生産性の向上をはじめ、組織成長につながるきっかけとなることでしょう。
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