北海道・苫小牧市で刺し網漁とカゴ漁を営む山口漁業代表の山口慎さま。大学卒業後に中学校の社会科教師として2年半勤務した後、漁業の世界に飛び込むという異色の経歴をお持ちです。2022年に自身の会社を立ち上げてからは、若い経営者として既存のやり方に縛られず、自分の頭で考え、自分の足で情報を探しにいくスタイルを貫いてこられました。 現在は、山口さまご自身と妹さま(非常勤)、非常勤の漁師1名、そしてインドネシア出身の特定技能人材3名の合計6名が中心となって船を動かしています。今回は、外国人材採用の経緯や、現場での関わり方、そして今後の展望について伺いました。
日本の若者が大切にするライフスタイルと、漁師の仕事のリアルなギャップ
ー外国人材の採用に至った経緯を教えてください。
以前、日本人の若手従業員を雇用していた時期もありましたが、短い期間でやめてしまう事がありました。人間関係は上手く行っていましたし、仕事もちゃんと覚えてくれました。それでも、天候によって出漁時間が大きく変わり、力仕事や生ものを扱う体力的なきつさもある漁師の仕事は、若者が大切にしているワークスタイルと合わなくなってしまっているんですよ。
早朝もあれば深夜もあり、勤務時間が不規則になることで、友人と遊んだりすることもできないというのは若い人にはつらいと思います。ちょうどその頃、周辺の船で外国人材の採用が先行していて、定着率の高さなど良い結果を出しているという話を耳にするようになったのもあって、自分のところでも外国人採用をしてみることにしたのです。
新たな可能性を求めて。前例のない支援機関探しという挑戦
ー数ある支援機関の中で、なぜトクティーを選んでいただいたのでしょうか。
トクティーさんじゃなきゃいけないと思ったわけではないのですが、これまでの繋がりとは違うルートで探してみたかったんです。苫小牧の漁業組合では大体同じ支援機関を使うことが多いのですが、それだと外国籍人材同士がお互いの会社の待遇を比べ合ってしまうなど、良いことばかりではないと聞いていたので、僕は違う道を選びました。
漁師のような現場仕事は、昔からのつながりに頼って同じ方法を選びがちなところがあるんですけど、コミュニティの外に出て探してみると、実は違う選択肢が見つかることはよくあります。もちろん、組合で足並みをそろえなければならないことは多いですが、外国人材のことに限らず、いろんなことを外から吸収して、より良い方法を見つけていければいいなと思っています。
国籍に関係なく、同じ物差しで。公平な指導哲学
ー外国籍の従業員への接し方で、意識していることはありますか?
僕の中では、接するのに「外国人だから」「日本人だから」という感覚はありません。新しく入った子には丁寧に接してあげようというくらいで。
ただ、誰しもそういう感覚を持っているわけではないと思うので、一緒に働く日本人従業員には、指示や教育において差別的な言葉や暴言をしないことをしっかり話して徹底してもらっています。結局は海の仕事で命にもかかわりますし、きつい言い方になってしまう事もあると思うんです。それでも、日本人従業員にはリーダーの役割もしてもらっていますし、お互いが気持ちよく働けるようにしてもらわなければ困ると思っています。
覚悟を持って働くから、辞めない
ー実際に採用してみて、良かったと感じる点を教えてください。
僕が一番印象に残っているのは、「僕らは仕事をしに来ているので」という、彼らが何気なく口にした一言です。天候や潮などの影響で出漁時間が急に変わることもあるんですけど、そこも嫌な顔ひとつせず対応してくれる。当たり前のようで、実はすごく大きなことだと思います。日本人の若い子たちは、良くも悪くも生活の中に仕事があるという感覚だけど、彼らにとっては仕事をするために日本に来ている。その大前提があるから、多少きついことがあっても、簡単にはやめません。
能力とか言葉は、正直やっていく中で身についていくものだと思っているので、まずそうやって現場に居続けてくれる人材を確保できたことが、僕らにとって一番大きかったですね。
特定技能2号という壁。それぞれの未来に、寄り添う覚悟
ー今後の外国人材育成という意味では、どのようにお考えですか?
うちの従業員たちも2号になりたいという希望は持っています。ただ、日常会話はできても、読み書きのスキルはまだ追いついていなくて、日々の仕事をこなしながら2号試験に受かるのは、正直簡単なことではありません。
また、彼らの多くは、家族を母国に残して来ていて、5年間しっかり働いてある程度の蓄えを作って国に帰る、というのを一つの目標にしている人もいるんです。本音を言えば、僕としてはずっといてほしい。でも、日本に来た理由や目的は一人ひとり違うので、それぞれにとって相応しい未来を、一緒に考えていければと思っています。
自分の足で、情報を探しにいく
ーこれから外国人材の採用を検討している経営者に、アドバイスをお願いします。
正直、雇用の手続きは想像以上に大変でした。北海道は行政手続きが遅いというのもありますし、必要な書類を集めるのに色々な役所を回らないといけない。経営者としても現場のプレイヤーとしても動いている身としては、そこにかなり時間を取られました。これはどの支援機関を使っていても、避けられない部分だと思います。だからこそ、これから採用を考えている人には、その準備には相応の時間と労力がかかるということを覚悟しておいてほしいですね。
あとは、知り合いから相談を受けた時によく話すのですが、候補者がこれまでの技能実習でどんな経験を積んできたかは、必ず確認した方がいいと思います。うちの場合、地域柄、網を使った漁が中心なんですが、例えば釣り漁業しか経験がない人だと、同じ「漁業」でも仕事の中身が全く違うので、現場に入ってから苦労することになります。そこは事前にちゃんと確認しておいた方が良いです。

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