近年、日本のコンクリート製品製造業界では深刻な人手不足が問題となっています。その解決策として注目されているのが、外国人労働者の受け入れを可能とする「特定技能」制度です。
本記事では、特定技能「コンクリート製品製造」について、対象業務の範囲、受け入れ条件、必要な日本語能力、安全対策、手続きの流れまでわかりやすく解説します。外国人材の採用を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
この記事では、特定技能制度の概要と、コンクリート製品製造分野で制度がどのように活用されているかを詳しく解説します。さらに、外国人労働者が従事できる具体的な業務内容、対象外となる作業、必要な日本語能力や専門スキル、安全対策の重要性についても触れています。
受け入れ企業が知っておくべき条件や手続きの流れ、守るべき法令や注意点についてもわかりやすくまとめていますので、初めて外国人材の採用を検討している方でも安心して理解できる内容となっています。
特定技能「コンクリート製品製造」とは

特定技能「コンクリート製品製造」は、日本のコンクリート製品製造業界で人手不足を補うために設けられた在留資格制度です。一定の技能や知識を持つ外国人労働者を受け入れることで、企業は製造現場の即戦力を確保でき、生産性や安定性の向上につなげることができます。
この分野では特定技能1号が適用されており、特定の技能試験や日本語試験に合格した外国人が対象となります。本記事では、制度の概要や対象業務、背景や必要性をわかりやすく解説します。
特定技能制度の概要
特定技能制度は、2019年4月に創設された新たな在留資格制度で、人手不足が深刻な特定産業分野で一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れることを目的としています。
制度には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、それぞれ求められる技能水準や在留条件が異なります。コンクリート製品製造分野では現在、特定技能1号のみが対象となっています。
コンクリート製品製造分野の背景と必要性
コンクリート製品製造業界は、少子高齢化や若手労働者の減少によって深刻な人手不足に直面しています。国内需要が依然として高い中、製造現場では熟練工の確保が難しくなっており、業界全体の生産性や納期の維持に課題があります。
こうした背景から、特定技能制度を活用した外国人労働者の受け入れが重要な解決策として注目されています。
特定技能「コンクリート製品製造」分野の受け入れ状況
特定技能「コンクリート製品製造」分野は、現在「工業製品製造業分野」に分類されており、これは以前の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」から名称が変更されたものです。
2024年3月29日には新たに業種・業務区分が追加され、「コンクリート製品製造」はその一つとして位置づけられています。
工業製品製造業分野全体の特定技能1号の受け入れ人数上限は、2024年4月からの5年間で173,300人と設定されています。出入国在留管理庁によると、2024年6月末時点での受け入れ実績は44,044人に達しており、今後も増加が見込まれています。
今後、業界内の人手不足解消に向け、行政や業界団体による支援体制の整備が進むことで、コンクリート製品製造分野でも特定技能外国人の受け入れはさらに拡大していくと期待されています。
参照:出入国在留管理庁|特定技能在留外国人数 (令和6年6月末現在)
特定技能「コンクリート製品製造」の対象業務

特定技能「コンクリート製品製造」分野では、外国人労働者が従事できる業務範囲が制度上明確に定められています。受け入れ企業は、どの作業が制度の対象となり、逆にどの作業は対象外なのかを正しく理解することが重要です。
ここでは、特定技能で従事可能な業務と、制度上従事できない対象外業務について、それぞれ具体例を交えてわかりやすく説明します。
特定技能で従事できる業務
特定技能「コンクリート製品製造」では、日本標準産業分類「2123 コンクリート製品製造業」に該当する業務が対象となります。具体的には、以下のような作業が従事可能です。
- コンクリートパイルの製造
- コンクリートブロックの製造
- コンクリート製品の型枠設置・解体
- 鉄筋組立ておよびコンクリートの打設作業
これらは、特定技能1号の対象業務として明確に認められており、外国人労働者が即戦力として従事できる分野です。
特定技能では従事できない業務(対象外業務)
一方で、特定技能「コンクリート製品製造」では従事できない対象外の業務もあります。以下のような業務は対象外とされているため、注意が必要です。
- 生コンクリートの製造(分類2122)
- 気泡コンクリート製品の製造(分類2129)
- 金属加工のみを行う業務
これらの対象外業務に誤って従事させると、制度違反となる可能性があります。受け入れ企業は、対象業務と対象外業務を正しく区別し、制度を適正に運用することが求められます。
外国人労働者に求められる日本語能力とは?試験・レベル・業務での実践力を解説

特定技能「コンクリート製品製造」分野で外国人労働者として働くためには、一定の日本語能力が求められます。これは単なる試験合格だけでなく、現場での実践力や安全管理にも直結する重要な要素です。
本記事では、どの試験に合格する必要があるのか、N4レベルの日本語とは具体的にどの程度なのか、さらに実際の業務でどれくらいの日本語力が必要なのかを順に解説していきます。
関連記事:日本語能力試験(JLPT)の価値とは?難易度や取得メリットを解説!
特定技能を取得するために必要な試験とは?
特定技能1号を取得するには、対象分野の技能評価試験と、一定の日本語能力を証明する試験に合格する必要があります。日本語能力は、日本語能力試験(JLPT)のN4以上、または国際交流基金日本語基礎テストの合格が条件です。
これにより、日常的な会話や基本的な業務指示を理解する能力が確認されます。
N4レベルの日本語とはどの程度?
JLPT N4レベルは、簡単な文章を読む・書く、日常生活で使われる表現を理解する力があることを示します。具体例としては、「休憩してください」「この部品を運んでください」といった短い指示や、「安全第一」「立入禁止」などの標識・張り紙を理解できるレベルです。
また、ゆっくり話しかけられれば、簡単な質問やあいさつのやりとりが可能です。
実際の業務で求められる日本語力
現場ではN4レベルに加え、業務特有の単語や作業手順を理解する必要があります。
たとえば、「型枠を外して」「鉄筋を組んで」「この材料を混ぜて」といった具体的な作業指示や、作業中の注意喚起(例:「足元に注意」「危険ですので近寄らないで」)を理解できる力が求められます。
企業側は、OJT(On-the-Job Training)や指さし確認、図解資料の活用などで現場対応力を育成する支援が大切です。
特定技能外国人の安全対策
製造現場では、外国人労働者が安全に働ける環境づくりが最重要課題の一つです。企業は労働安全衛生法など法令を遵守し、文化や言語の違いを踏まえた安全対策を講じる必要があります。
法令で定められた安全対策
労働安全衛生法では、事業者が労働者の安全と健康を守る責任を負うことが義務づけられています。特定技能外国人も例外ではなく、作業現場では以下のような具体策が求められます。
- 作業内容に応じた安全装備(ヘルメット・安全靴・手袋など)の着用義務
- 機械設備の安全点検と定期メンテナンスの実施
- 危険箇所の標識設置や立入制限の徹底
- 新規入場者への安全オリエンテーションの実施
これらの対策を怠ると、重大事故の発生や企業の責任問題につながるため、必ず徹底する必要があります。
安全教育の具体的な取り組み
外国人労働者には言語の壁があるため、通常の安全教育だけでは十分ではありません。企業は以下のような多言語対応を取り入れることで、理解度を高めることが求められます。
- 母国語で作成した安全マニュアルやビデオ教材の提供
- 通訳者や多言語対応スタッフを交えた安全講習
- イラストや写真を用いた視覚的な指導資料の活用
- 実技を通じたOJT形式の研修
こうした教育により、労働者本人が安全意識を持ち、危険を回避する力を養うことが可能になります。
コミュニケーションによる安全管理
日常的なコミュニケーションは、安全管理の基盤です。企業は以下のような工夫を行い、現場全体での情報共有と信頼構築を進める必要があります。
- 毎日の朝礼やミーティングで作業予定・注意点を確認
- 簡単な日本語・多言語の貼り紙や指差し確認表の設置
- 問題が起きた際にすぐ相談できる相談窓口の設置
- 定期的なアンケートや意見交換会の開催で現場の声を拾う
こうした取り組みを通じて、言語や文化の壁を越え、安心して働ける職場環境を整えることができます。
特定技能外国人の受け入れ条件と手続き
特定技能外国人を受け入れるためには、企業側にいくつかの条件と手続きが求められます。これらを正しく理解し、準備を進めることで、スムーズな受け入れが実現できます。
企業側の受け入れ要件
受け入れ企業は、適切な労働環境を整えることが求められます。具体的には、労働基準法や最低賃金法などの法令を遵守し、外国人労働者に対して日本人と同等以上の報酬を支払う必要があります。また、過去に重大な労働法違反や不正行為がないことも条件です。
さらに、受け入れに際しては業界の協議会(特定技能協議会)への加入が義務付けられており、定期的な情報提供や報告が必要です。職場環境の整備だけでなく、生活支援や相談窓口の設置など、労働者が安心して働ける体制づくりが求められます。
手続きの流れと必要書類
受け入れ手続きは複数のステップを順に進める必要があります。主な流れは次の通りです。
- 特定技能所属機関として法務省に登録
- 外国人労働者との労働契約締結
- 支援計画の策定と実施体制の準備
- 在留資格認定証明書交付申請(入管庁への提出)
- 入国後の労働開始と支援の実施
必要書類には、雇用契約書、企業概要、支援計画書、協議会加入証明書、労働者の試験合格証明書などがあります。不備があると申請が遅延・却下される可能性があるため、細心の注意を払い、必要に応じて専門家に相談しましょう。
法令遵守と留意点
受け入れ後も、法令遵守は継続的に求められます。特定技能外国人の就労状況や支援実施状況は定期的に協議会へ報告しなければならず、未報告や虚偽報告が発覚した場合、企業は受け入れ停止などの措置を受けることがあります。
また、外国人労働者が不安や悩みを抱えた場合にすぐ相談できる窓口を設けることや、定期的な面談を実施して労働環境や支援内容を見直すことも重要です。企業は一方的に「雇って終わり」ではなく、長期的なパートナーとして共に働ける関係づくりを意識しましょう。
まとめ
特定技能「コンクリート製品製造」は、慢性的な人手不足を抱える業界にとって、重要な解決策の一つです。適切な準備と手続き、安全管理を徹底することで、外国人労働者との協働がスムーズに進み、生産性の向上や職場の活性化が期待できます。
多様な人材を受け入れ、企業の持続的な発展を目指していきましょう。