昨今、国内では外国人の採用が活発化してきています。外国人の採用は、事業成長や職場の活性化を図るうえでメリットがたくさんありますが、注意すべき点もあります。トラブルや法に抵触したりすることを防止し、適切な採用手続きを行うことが求められます。
この記事では、外国人雇用のメリット・デメリットおよび注意点をまとめつつ外国人の採用に向け、明日から実践できるエッセンスを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
外国人雇用のメリット
外国人の雇用を検討している企業は、外国人雇用のメリット・デメリットを把握したうえで、採用活動を展開することが大切です。ここでは外国人雇用のメリットについて解説します。
海外進出の戦力
外国人を雇用することで、海外進出における大きな戦力となることが期待できます。外国人人材は多言語能力や人脈が豊富である人材が多く、新しい市場を開拓する際の力となります。
また、彼らの文化的理解や市場知識は、異文化間の商取引の際に非常に価値があります。企業が国際的な視野を拡げ、グローバル市場での競争力を強化するための重要な資源として機能するでしょう。
職場の活性化
外国人を雇用することによる職場の活性化は、多様な文化や視点を持ち込むことで新しいアイデアやコミュニケーションの向上につながることでしょう。具体的には、異なる背景を持つ従業員が互いのアイデアや技術を共有することで、イノベーションの促進や問題解決のスキル向上が挙げられます。
また、職場の多様性を増し、社員同士の相互理解を深められます。このような環境は、職場のモチベーションを高め、チームワークを強化し、結果として全体の生産性向上に寄与することが見込まれます。
優秀な人材の確保
優秀な人材を確保したい企業は、外国人人材の採用に注力すべきです。異なる文化背景や専門知識を持ち込むことで、新しいアイデアやアプローチを提供し、企業の革新と競争力を強化できるでしょう。
また、多言語を操る外国人人材は、国際的なクライアントとのコミュニケーションや新たな市場への展開において重要な役割を果たすことができます。
外国人雇用のデメリット
外国人雇用のデメリットや注意点について解説します。
文化・言語の違いに戸惑う
文化的背景が異なることによって、仕事の進め方やコミュニケーションのスタイルが異なるため、お互いの期待が一致しない場合があります。例えば、日本特有の長時間労働やサービス残業が外国人労働者にとって非常に困惑するポイントとなることがあります。
また言語が異なることで、法的解釈の違いや、仕事上のルールに対する認識の違いが問題を引き起こすことがあります。特に、宗教的な祝日の扱いや、労働条件に関する規定など、職場での規則や法律が適切に理解されていない場合があります。
採用コストがかかる
日本企業における外国人採用の際、採用コストがかかることは念頭に置いておくべきでしょう。外国人採用には、就労ビザの手続き、言語の壁を乗り越えるためのコミュニケーションサポート、異文化間の誤解を防ぐための研修やプログラムの実施など、多くの追加的なコストが伴います。
具体的には、外国人のビザ申請や更新に関する手数料、法的サポート、そして移動や住居の手配などが含まれる場合が多く、これらはすべて時間と費用を要するプロセスです。さらに、職場のダイバーシティを支えるための研修や教育プログラムも、通常の採用活動にはない追加コストを生じさせる可能性があります。
労働環境に馴染めないことがある
前述した文化や言語の違いなどから、労働環境に適応できず外国人にとってストレスのかかる時期があります。企業が外国人労働者の文化的背景を理解し、適切な支援や研修を提供することが重要です。
また、外国人自身も、日本の職場文化を学び、自ら積極的にコミュニケーションをとる努力が求められるでしょう。
外国人雇用の注意点
外国人を雇用する場合には、採用活動および入社前後で様々な手続きや対応が求められます。ここでは確認しておくべきポイントについて解説します。
語学能力の確認
外国人人材の日本語の能力は必ず確認しつつ採用活動を進めましょう。日本語能力は、日本語能力試験のレベルから確認可能です。N1~N5までの区分があり数字が若いほど日本語の能力が高いです。
面接時には、応募者の日本語能力を適切に評価するために、実際の職務で起こりえるシナリオを基にした質問を用いることが推奨されます。これにより、単に語学の知識を評価するだけでなく、実際の業務環境での適用能力を見極めることができます。
在留資格の有無や変更
外国人の在留資格は、技術・人文知識・国際業務、高度専門職、企業内転勤、介護、教育など多岐にわたります。各在留資格には許可される活動が厳格に定められており、例えば「技術・人文知識・国際業務」の資格では、専門的な知識を要する業務に従事することが可能です。
外国人を雇用する際には、これらの在留資格の条件を満たしていることを確認し、必要に応じて適切な変更を行うことが、トラブルを避け、円滑な雇用関係を維持するために重要です。在留資格の管理は、企業の法的責任を果たす上で欠かせない要素となります。
社内環境・教育体制の整備
初めて外国人を雇用する企業は、入社前後のフォローアップ体制を整えておくことが大切です。言語の壁をどのようにクリアし円滑なコミュニケーションをとれるようにするのかを考え、個人および組織全体で外国人社員が活躍できる社内環境を構築することが求められます。
昨今では、社内のグローバル化を進めている日本企業も増えてきているため、各企業の取り組みを参考にしてみるのもよいでしょう。
雇用・離職時に正しく届出する
日本で外国人を雇用する際、雇入れと離職の事実を正確にハローワークへ届け出ることは法的に義務付けられています。これは、外国人労働者の雇用状況を国が把握するために必要であり、適切な労働環境の確保や再就職支援のための基礎データとして利用されます。
外国人労働者の在留カードやパスポートを確認しながら正確に行うことが求められ、在留資格や在留期間、資格外活動許可の有無などの詳細情報を正しく報告する必要があります。また、届出を怠ったり、虚偽の届出をした場合、最大30万円の罰金が科される可能性があります。
労働法や保険は日本人と同じ
外国人を雇用する上で適用される労働法や保険については、基本的には同じポジションとなる日本人と同等であることが求められます。詳細について解説します。
労働条件について
労働条件は、国内の労働法規に則って厳密に管理されるべきものです。特に、外国人労働者がその能力を適切に発揮できるように、労働慣行や求職活動に必要な情報に精通していない可能性を考慮して、事業主は適切な雇用管理を行う必要があります。具体的には以下の管理が条件として遵守するように提示されています。
項目 | 内容 |
労働条件の提示 | ・モデル様式の活用、母国語や平易な日本語等での説明 |
適正な賃金の支払い | ・最低賃金額以上の賃金を支払うこと
・ 基本給、割増賃金等の賃金について適正に支払うこと ・ 労使協定に基づき食費、居住費等の控除を行う場合、不当な控除額 |
適正な労働時間の管理 | ・時間外・休日労働の上限規制の遵守
・労働時間の状況の客観的方法での把握 ・年次有給休暇の付与 |
一部引用:厚生労働省 外国人雇用 外国人雇用管理指針の主な改正内容(平成31年4月1日付改正)
各種保険について
外国人労働者も基本的には日本人と同様に健康保険や厚生年金保険に加入する必要があります。申請に向けて適切な支援を行うことが求められています。
税金について
外国人労働者が日本の税制下でどのように扱われるかは、その居住状況によって大きく異なります。基本的に、日本に居住する外国人労働者は日本での収入に対して所得税と住民税の納税義務があります。非居住者の場合は、日本国内で発生した収入のみが課税の対象となります。
在留資格に応じた対応
外国人の雇用では、大きく3つの区分(特定技能、技能実習、留学生)に応じて必要な対応が異なります。各区分の対応の詳細について解説します。
特定技能
特定技能外国人の雇用には、登録支援機関を活用しましょう。受入れ企業が委託し、特定技能外国人の日本での生活や就労をサポートする機関です。支援内容には、在留資格の更新手続き、日常生活の支援、緊急時の対応などが含まれます 。
特定技能雇用契約は、入管法で定められた事項にも対応している必要があります。在留資格の管理や適切な報酬の支払いが含まれ、企業はこれらの規定を遵守しなければなりません。
技能実習
技能実習生への措置としては、一般の労働者と同様に労働基準法の保護が適用されます。1日8時間、週40時間の労働制限や、時間外労働に対する制限(月45時間、年360時間)が含まれるため、企業はこれらの基準を遵守し、技能実習生の健康と安全を確保する必要があります 。
また、技能実習生の失踪は深刻な問題となっており、生活環境の改善、相談体制の整備などの対策を講じていくことが大切です。
留学生
留学生が就労するには、適切な在留資格への変更が必要ですが、学生が雇用される前に入国管理局の許可を得て完了していなければなりません。申請書や添付資料の不備がないように、専門の行政書士に相談するのもおすすめです。
アルバイトとして雇用する場合は、資格外活動許可が必要で、週28時間以内の就労が義務付けられています。
雇用時に確認すべき書類
外国人の雇用前後で手続きの必要な書類を下記にまとめます。
- 雇用契約書
- 在留資格認定証明書
- 健康診断書
- 在留カード
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 外国人雇用状況届出書
書類の準備と提出は、外国人労働者を正しく法的に雇用するために不可欠です。企業はこれらの手続きを適切に行い、外国人労働者の権利を守りつつ、法的責任を果たす必要があります。
言語や文化の異なる外国人人材との契約締結は時間がかかったり、理解してもらえなかったりすることがあるため、現地語でコミュニケーションを取るなど工夫することが重要です。
外国人も魅力に感じる日本での雇用
外国人が日本企業で働くメリットや魅力はたくさんあります。日本企業は一般的に安定した雇用を提供しているため、特に大企業や公的機関では長期的なキャリアを築きやすいとされています。外国人労働者にとっても安定した生活基盤を築く上で魅力的です。
また、高度な技術や専門知識を学ぶ上で、技術革新が進んでいる分野の多い日本で働くことは価値があるといえます。最後にプライベートを通じ日本で過ごすことで、日本文化の理解や将来的に関われる人脈の形成につながることも外国人にとって魅力的といえるでしょう。
時間に余裕を持ち適切な雇用手続きを!
外国人を雇用する上では、日本人の採用とは異なり、採用コストや入社後のフォローに時間がかかる場合があります。雇用を検討する企業は、受け入れ体制を整えスムーズに対応ができるよう準備しましょう。
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