近年、建設業界では慢性的な人手不足が深刻な課題となっています。特に造園業では、高い技術と体力を要する作業が多く、人材の確保が難しくなっています。

こうした背景を受けて、政府は2019年に「特定技能制度」を創設し、一定の技能と日本語能力を有する外国人の受け入れを開始しました。造園業もこの制度の対象となっており、即戦力となる外国人材の活用が注目されています。

本記事では、特定技能「造園」の制度概要から、採用の手順や企業側の準備、採用後の定着支援までをわかりやすく解説します。

この記事でわかること

この記事では、特定技能制度における「造園」分野の基本概要をはじめ、外国人を採用する際のメリットや手続きの流れをわかりやすく解説します。

また、外国人材に任せられる具体的な業務内容や、受け入れ後の教育・サポート体制についても丁寧に紹介。さらに、文化や言語の違いを乗り越えるためのポイントや、法的に遵守すべき点についても触れており、初めての外国人採用でも安心して取り組める内容になっています。

「実際にどう進めたらよいの？」「採用後はどう対応すればいい？」といった現場の不安にも応える構成ですので、造園分野での外国人採用を検討している企業の方にとって、実務的なヒントが得られる内容となっています。

特定技能『造園』の基本概要

まずは、特定技能制度とはどのような制度なのか、そして造園分野が建設業の中でどのように位置付けられているのかを解説します。また、特定技能『造園』で外国人が携わることができる業務の範囲についても紹介します。

特定技能制度とは何か

特定技能制度とは、日本国内で人手不足が深刻な業種において、一定の専門知識・技能を持つ外国人を受け入れるための制度です。2019年に創設され、「即戦力」として働ける人材を受け入れることを目的としています。

制度の導入以降、多くの外国人が日本の産業を支える力として活躍しており、2024年12月末時点では全体の特定技能外国人数が約28万人に達しています。なかでも建設分野では38,365人が在留しており、造園を含む現場の人手不足を支える重要な存在となっています。

特定技能には「1号」と「2号」があり、造園分野は「特定技能1号」の対象に含まれています。これにより、技能試験と日本語試験に合格した外国人が、造園の現場で就労できるようになりました。

参照：出入国在留管理庁【第１表】主な国籍・地域別　特定産業分野別　特定技能１号在留外国人数　（2024年12月末）

建設分野における造園業の位置付け

造園業は、単なる植栽や剪定にとどまらず、都市や地域の景観づくり、自然との調和を担う重要な役割を持っています。公園、庭園、緑地などの施工・維持管理を通じて、快適な生活環境を支える仕事です。

建設業界の一角として位置づけられており、その中でも専門性の高い技能が求められる分野となっています。

なぜ造園分野で外国人材の受け入れが必要なのか

造園業は、少子高齢化や若年層の就業離れの影響を受け、人手不足が深刻化しています。特に繁忙期や大規模な造園工事では、安定した労働力の確保が課題となっています。

こうした背景から、外国人材の受け入れが現場の即戦力として期待されており、特定技能制度によってその実現が可能になりました。

特定技能『造園』を活用するメリット

造園業界では、高齢化と若手不足が進行し、慢性的な人手不足が続いています。特定技能制度を活用することで、即戦力の外国人材を安定的に確保でき、企業の事業継続や技術継承にもつながります。ここでは制度を活用する3つの大きなメリットを紹介します。

即戦力人材の確保により、現場の負担を軽減

特定技能人材は、試験によって造園に関する一定の技能と日本語能力を証明しています。そのため、単純作業だけでなく、剪定や植栽管理といった専門的な業務にも即座に対応可能です。

日本人社員の補助にとどまらず、繁忙期の現場作業の主力としても期待でき、社員の負担軽減や残業削減にもつながります。

最大5年間の在留により、安定的な人材育成が可能

従来の技能実習制度では、原則3年間で帰国となるため、育成した人材が定着せず、再び教育コストが発生していました。一方、特定技能1号では最長5年間の就労が可能なため、現場に慣れた人材が長く働くことができます。

中長期的な視点での人材育成や技術継承が可能となり、チームの安定化にも貢献します。

幅広い業務に対応できるため、現場の柔軟性が向上

特定技能制度では、外国人が剪定、芝生管理、植栽、維持管理など、造園に関する幅広い業務に従事できます。業務内容の制限が少ないため、繁忙期の業務分担や現場ごとの要望に柔軟に対応できる体制が整います。

これにより、急な案件への対応力や受注の安定にもつながります。

採用の見える化と社外への好印象

技能試験の合格証明があることで、外国人採用の「質」が可視化され、顧客や発注元に対しても信頼性の高い採用であることを説明しやすくなります。

また、外国人の受け入れに積極的な姿勢は、SDGsや多様性推進の観点からも評価されやすく、企業の社会的信頼にもプラスとなります。

特定技能『造園』での外国人採用の手順と必要な手続き

特定技能『造園』の外国人材を採用するには、適切な準備と明確な手続きを踏むことが重要です。ここでは、採用から在留資格の取得までの流れと、企業側が満たすべき要件について解説します。

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特定技能外国人の採用フロー

採用は以下のような流れで進められます。

• 人材ニーズの確認と採用計画の立案
• 求人票の作成と募集（送り出し機関・仲介業者の活用も可）
• 選考・面接
• 雇用契約の締結
• 在留資格認定証明書の交付申請（または変更申請）
• 外国人の入国・就労開始

技能実習から移行するケースでは、すでに日本での就労経験があるため、スムーズな採用が可能です。

在留資格の取得と申請方法

外国人を採用する際は、「特定技能1号」の在留資格を取得する必要があります。申請は地方出入国在留管理局で行い、主な提出書類は以下の通りです。

• 雇用契約書
• 支援計画書（企業が支援責任者となる場合）
• 技能試験と日本語試験の合格証明書
• 申請人のパスポート・履歴書等

審査には1〜2ヶ月程度を要することが多いため、余裕をもった準備が大切です。

受け入れ企業が満たすべき条件

受け入れ企業は、外国人が安心して働ける環境を整備する義務があります。主な条件は以下の通りです。

• 法令遵守：労働基準法、最低賃金法などの順守
• 労働環境の整備：就業規則や労働条件通知書の整備
• 支援体制の構築：生活オリエンテーション、日本語学習支援、相談窓口の設置
• 定期的な報告：出入国在留管理庁への受け入れ状況の報告

登録支援機関を活用する場合、企業の負担を軽減しながら適切な支援体制を構築できます。

特定技能『造園』の対象業務と必要な技能

特定技能『造園』の分野では、外国人労働者が実際にどのような業務に従事できるのか、また求められる技能や試験内容について明確に理解しておくことが重要です。

このセクションでは、具体的な業務内容と必要な技術、さらに採用後に求められる教育・研修のポイントを解説します。

従事可能な業務内容

特定技能『造園』で従事できる業務には以下のようなものがあります。

• 植栽作業（樹木や草花の植え付け）
• 剪定作業（樹木の形状管理や健康維持）
• 芝生の施工・管理
• 景観づくりのための石組み・舗装
• 庭園・公園・緑地の維持管理

これらの作業は、造園業務の中心となるものであり、日本人スタッフと同様の役割を担うことができます。

求められる技能と試験内容

外国人が特定技能『造園』として働くためには、以下2つの試験に合格する必要があります。

• 技能評価試験：造園に関する基本的な作業や安全管理に関する実技・筆記試験
• 日本語試験：「日本語能力試験（N4以上）」または「国際交流基金日本語基礎テスト」

技能評価試験は、一般社団法人建設技能人材機構（JAC）などが実施しており、年に数回、主要都市で開催されています。

外国人材の教育・研修のポイント

採用後の教育・研修も非常に重要です。特に以下の点に注意して行うと効果的です。

• 日本の施工基準や安全ルールの教育：現場での事故防止に直結します
• 用語・指示の日本語理解：現場でのコミュニケーション精度を上げる
• 業務フローの共有：作業の効率化とトラブル防止につながります

これらの研修を行うことで、外国人材が即戦力として活躍できる体制を整えることができます。

外国人労働者の定着と成功のためのポイント

外国人労働者を採用するだけでなく、長く安心して働いてもらうには、適切なサポートと職場環境の整備が欠かせません。このセクションでは、外国人材の定着を図るために企業が取り組むべきポイントを紹介します。

文化・言語の壁を乗り越える方法

文化や言語の違いは、外国人労働者にとって大きなストレス要因となることがあります。以下のような取り組みが効果的です。

• 職場内に簡単な日本語マニュアルを用意する
• 多言語対応のアプリやツールを活用して指示を伝える
• 月1回の交流会など、相互理解を深める機会を設ける

こうした工夫により、信頼関係を築きやすくなり、業務も円滑に進みます。

労働環境の整備とサポート体制

外国人が安心して働ける環境を整えることも、定着率の向上に直結します。具体的には次のような配慮が求められます。

• 住宅の紹介や契約サポート（生活インフラ含む）
• 相談窓口の設置（日本人スタッフによる対応）
• 困ったときの通訳や翻訳サポートの提供

身近な悩みにも対応できる体制を整えることで、企業への信頼感が高まり、長期雇用へとつながります。

コンプライアンスと法的遵守の重要性

外国人材の受け入れにおいては、労働基準法や入管法などの関連法規を正しく理解し、遵守することが非常に重要です。

• 在留資格の管理（期限切れの確認）
• 労働条件の明示と適切な契約書の作成
• 労働時間・休日・給与に関する法定基準の順守

法令遵守を徹底することで、行政指導やトラブルのリスクを回避し、健全な雇用環境を実現できます。

まとめ

特定技能『造園』制度を活用することで、企業は深刻な人手不足を補い、安定的に高技能な人材を確保できます。造園分野は幅広い業務に対応できる即戦力人材が求められており、特定技能制度を通じて外国人労働者の採用を進めることは、大きな戦力強化につながります。

採用にあたっては、在留資格の取得手続きや受け入れ体制の整備、文化的な配慮が重要です。外国人材が長く安心して働ける環境を作ることが、企業の成長と持続的な労働力確保の鍵となるでしょう。

制度を正しく理解し、計画的に活用することで、造園業の現場に新たな風を吹き込むことができます。ぜひ本記事を参考に、第一歩を踏み出してみてください。