航空業界における外国人材の活用が進む中、「特定技能」制度を通じた受け入れが注目されています。
本記事では、その制度の概要や対象業務、日本語能力の目安、受験方法、雇用に関するメリット、手続きの流れまで、制度の活用を検討する企業に向けた実務的な情報をお届けします。
人手不足が続く国内航空業界では、即戦力となる人材の確保が課題となっています。特定技能制度の導入により、こうした課題解決に向けた新たな選択肢が生まれています。本記事では、制度の基本情報とともに、受け入れに必要な準備や注意点についても触れていきます。
この記事からわかること
この記事では、特定技能制度を活用して航空分野で外国人材を受け入れる際の基本的な仕組みから、実際に従事できる業務内容、必要な日本語能力や試験制度の概要、現在の受け入れ状況に至るまでを詳しく解説します。
また、企業が特定技能人材を採用することで得られるメリットや、受け入れに必要な手続き、法令遵守のポイント、所属機関としての要件など、実務に直結する情報もまとめています。
特定技能の導入を検討中の企業担当者の方にとって、制度理解と導入判断の助けとなる内容を網羅しています。
特定技能「航空」分野の概要

このセクションでは、特定技能制度の基本的な概念と航空分野での具体的な対象業務、必要な日本語能力についてわかりやすく解説します。重要なポイントを整理し、実際に制度を利用する際に知っておくべき点をまとめました。
関連記事:航空業で特定技能外国人材の採用を考えている方へ!在留資格・特定技能の受け入れポイントや費用、注意点を解説!
特定技能制度とは
特定技能制度は、2019年4月に改正出入国管理法の施行とともにスタートした制度で、日本国内の深刻な人材不足分野において、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としています。
制度では、対象分野ごとに業務範囲や試験内容、日本語能力の目安などが定められており、航空分野もそのひとつです。実際に、空港現場の業務量増加や高齢化などにより、労働力の確保が課題とされてきた背景から、航空業界も制度の恩恵を受けています。
航空分野の対象業務
航空分野で特定技能の対象となる業務は、大きく分けて以下の二つです:
1. 空港グランドハンドリング業務: 航空機の誘導、手荷物や貨物の積み下ろし、機内清掃、搭乗橋の操作など、地上での運航支援業務。
2. 航空機整備業務: 航空機の定期点検、部品交換、整備作業など、安全な飛行を支えるための技術業務。
これらの業務は、航空機の安全運航を支える重要な役割を担っており、専門知識と現場での実践経験が必要とされるため、即戦力の外国人材が求められます。
なお、これらの業務のうち、航空管制業務や旅客カウンター対応といった、国家資格を要する業務や高度な日本語能力が必要とされる業務については、特定技能の対象外となっています。
外国人材の受け入れ状況
出入国在留管理庁の公表によると、2024年12月末時点で、特定技能「航空」分野における在留外国人数は合計1,382人です。その内訳は「グランドハンドリング業務」が1,369人、「航空機整備業務」が13人となっています。
こうしたデータからも、航空分野における特定技能外国人の受け入れが着実に進んでいることがわかります。今後も人材ニーズの高まりに応じて、さらなる受け入れ拡大が期待されています。
参照:【第1表】主な国籍・地域別 特定産業分野別 特定技能1号在留外国人数
特定技能「航空」分野の試験内容と受験方法

特定技能「航空」分野で外国人材を採用するためには、対象者が所定の「技能評価試験」と「日本語試験」に合格している必要があります。これらの試験は、現場で必要とされる知識やスキル、言語能力を備えているかを確認するために実施されています。
本章では、それぞれの試験の概要と、企業側が把握しておくべきポイントについて解説します。
技能評価試験の詳細
航空分野の技能評価試験では、対象業務に関する知識と実務スキルを確認する内容が出題されます。公益社団法人日本航空技術協会(JAEA)などが実施する評価では、実技+筆記形式で、実際の業務を想定した出題が行われます。
例えば、航空機の地上誘導、荷物の積み降ろし作業、点検器具の使用方法など、安全かつ正確な対応が求められる業務に直結した内容が含まれており、合格者は一定の現場力を備えていると評価されます。
日本語試験と求められる語学レベル
特定技能「航空」分野で働くには、日本語による基本的なコミュニケーション能力が不可欠です。業務中には口頭での指示、緊急対応、報連相(報告・連絡・相談)などが求められるため、一定の日本語能力が前提とされています。
制度上の基準では、「日本語能力試験(JLPT)」のN4レベル以上が目安とされています。これは、日常会話がある程度できるレベルであり、現場でのやり取りに支障が出ないことが期待されるラインです。
実際の試験では、読み書きに加えて、現場での理解力や応答能力も含めたスキルが求められることが多く、日本語学習と並行して業務内容への理解を深めることが推奨されています。
試験の実施スケジュール
試験は年間を通じて複数回実施されており、日本国内(東京・大阪・福岡など)に加えて、海外(フィリピン・インドネシアなど)でも受験が可能です。試験日程や会場は実施団体の公式サイトなどで随時公表されており、受験計画を立てる際には最新情報の確認が必要です。
特定技能人材の雇用メリット

航空分野において特定技能人材を雇用することは、企業に多くのメリットをもたらします。ここでは、その効果や実際の事例に基づくメリットを明確に示し、受け入れ企業が得られる利点について探ります。
人手不足解消への効果
航空業界では、コロナ禍を経た人員不足の影響が現在も続いており、とくに地上業務の現場では作業負担が大きな課題とされています。そうした中、特定技能人材の採用は、即戦力として現場の稼働を支える実効的な対策のひとつです。
たとえば、ある大手空港運営会社では、グランドハンドリング業務に特定技能外国人を導入したことで、業務分担の効率化が進み、全体の処理スピードやスタッフの満足度が向上したという報告もあります。
このように、即戦力人材として採用できる特定技能外国人の存在は、人材不足の解消だけでなく、業務の安定化や従業員の負担軽減にもつながると考えられています。
組織の国際化と活性化
外国人材の受け入れは、単なる労働力の確保にとどまらず、組織内に新たな視点や多様性をもたらすきっかけにもなります。異なる文化的背景を持つ人材が加わることで、社内のコミュニケーションスタイルや価値観に柔軟性が生まれ、チームの一体感が高まることもあります。
実際に、ある航空関連企業では、特定技能で採用された外国人スタッフが母国語を活かして外国人観光客の案内業務をサポートし、サービス向上につながったという事例があります。これにより、企業の国際対応力や顧客満足度が大きく改善されました。
このように、外国人材の登用は組織の活性化や国際化戦略の一環としても重要な意味を持っています。
新たな視点やスキルの導入
海外での業務経験を持つ人材を採用することは、業務の見直しや効率化、技術力の底上げにもつながります。とくに整備業務など専門性の高い領域では、母国での経験を日本の職場で活かす事例も見られます。
たとえば、東南アジアからの特定技能整備人材が、現地で採用されていた効率的な整備手順を提案し、日本企業でも一部業務に反映されたケースも報告されています。このような「外からの知恵」が業務改善のヒントになることも少なくありません。
新たな視点や技術の導入は、企業の成長力や現場改善に直結するメリットといえるでしょう。
外国人材受け入れの手続きと注意点
ここでは、外国人材を受け入れる際の手続きの流れと、法令遵守、リスク管理、さらに特定技能所属機関として必要な要件について詳しく説明します。正確な手続きが企業の信頼性向上と労働環境の整備に直結します。
受け入れ手続きは、各種書類の提出や官公庁との連携が重要であり、失敗すれば行政指導や罰則を受けるリスクがあります。公的資料を参照しながら、手続きの細部と注意点について述べます。
雇用手続きの流れ
特定技能外国人を受け入れるためには、雇用主となる企業が「特定技能所属機関」として必要な手続きを行う必要があります。主なステップは以下の通りです:
1. 雇用契約・受け入れ計画の作成
2. 必要書類(雇用契約書・支援計画・在留資格変更許可申請書等)の提出
3. 出入国在留管理局への申請
4. 在留資格の取得後、外国人材の就労開始
手続きの過程では、支援内容や労働条件の明確化が求められるほか、企業は「登録支援機関」との連携を通じて支援体制を整える必要があります。
法令遵守とリスク管理
外国人材の雇用においては、労働関係法令や出入国管理法、社会保険制度など、さまざまな法的枠組みを正しく理解・遵守することが前提となります。
たとえば、過去には書類不備や支援計画の不履行を理由に、受け入れ停止処分を受けたケースもあるため、制度に関する正しい理解と社内体制の整備が不可欠です。登録支援機関や専門コンサルタントを活用することで、リスクを最小限に抑えることも可能です。
特定技能所属機関の要件
企業が特定技能所属機関として認定されるには、労働条件や支援体制、法令遵守状況に関する一定の基準を満たす必要があります。具体的には、以下のような要件があります:
- 雇用契約の適正性(報酬、勤務時間、休日など)
- 外国人材支援の実施(生活支援、日本語学習、相談窓口の整備等)
- 定期的な報告・記録の提出義務
制度に沿った適正な運用を行うことで、信頼性の高い所属機関としての認定が可能となり、円滑な受け入れや行政との連携にもつながります。
まとめ
航空分野における特定技能制度は、人手不足の解消と即戦力人材の確保に役立つ制度です。グランドハンドリングや整備業務など、専門性の高い現場において、外国人材の活躍が期待されています。
また、制度の活用により組織の国際化や業務の効率化も図ることができ、企業にとっては採用戦略の選択肢のひとつとして有効です。正しい制度理解と準備を行い、自社に合った形での活用を進めましょう。