【特定技能】建設と製造業分野の業務区分変更点を詳しく解説

在留資格

2022/11/25

【特定技能】建設と製造業分野の業務区分変更点を詳しく解説

2022年8月30日に、特定技能における建設業と製造業の業務区分統合と拡大が閣議決定されました。在留資格としての特定技能が運用開始されてから3年以上が経過したことで、より実態に即した運用を可能にしたいという専門工事業団体 […]

目次

2022年8月30日に、特定技能における建設業と製造業の業務区分統合と拡大が閣議決定されました。在留資格としての特定技能が運用開始されてから3年以上が経過したことで、より実態に即した運用を可能にしたいという専門工事業団体等の要望を受けた形での決定となっています。

当記事では、業務区分の統合が行われた建設業と製造業の統合後の新業務区分や試験区分の変更について解説をしています。建設業や製造業において、特定技能外国人の受け入れを検討している企業担当者は、ぜひ参考にしてください。

特定技能の建設と製造業分野の業務区分が大幅に変更

閣議決定により統合されるまでの業務区分は、建設業と製造業ともに19区分と非常に細分化されており、業務範囲もそれぞれ限定的なものなっていました。また、建設業で行われる作業の中には、特定技能の業務区分に含まれない作業も存在しており、専門工事業団体から不満の声が上がっていたことも統合の理由の1つとなっています。

製造業においても、多能工を求める現場のニーズと細分化された特定技能の業務区分は合致していませんでした。そのため、建設業と製造業ともに現場の実態に沿った業務区分の統合が行われ、統合後はより現場のニーズに沿った制度運用が可能となっています。

建設分野の新業務区分(3区分)の詳細

建設業における特定技能では、細分化された特定の区分で資格を取得しても、他の区分の業務を行うことができず、柔軟性を欠いた制度となっていました。また、技能実習の対象であるにも関わらず、特定技能の区分にはない業務があるなど、制度の不整合も存在していましたが、今回の統合により、柔軟性と整合性を持った制度へと変更がなされています。

統合後の建築分野における業務区分は、それまでの19区分から「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3つに変更されました。

この統合により、それまで所持していた資格の属する区分であれば、他の業務に従事することも可能となりました。統合後は、統合前と異なり、建設業として許可が必要な29業種の全てを網羅している点もポイントです。

統合後の新区分では、業務区分に含まれる業務の全てを行うことが可能となります。ただし、実際に特定技能外国人を新区分において業務に従事させる場合には、業務範囲を明確にした上で、同等の技能を有する日本人と同等以上の報酬とするように留意することが必要です。

業務区分【土木】

業務区分としての土木は、指導者の指示監督を受けながら、土木施設の新設・改築・改装・維持・修繕を行う業務とされています。代表的な業務例は次の通りです。

  • コンクリート圧送
  • 土工
  • 建設機械施工
  • とび
  • 型枠施工
  • 鉄筋施工

統合前であれば、建設機械施工の資格を取得した特定技能外国人は、建設機械施工の業務しか行えませんでした。しかし、統合後は、土木区分の資格を取得した特定技能外国人は、上記のような土木区分に含まれる業務の全てを行うことが可能となりました。

業務区分【建築】

業務区分としての建築は、指導者の指示監督を受けながら、建築物の新築・増築・改装・移転・修繕及び模様替えに係る業務とされています。代表的な業務例は次の通りです。

  • 型枠施工
  • 左官
  • 鉄筋継手
  • 鉄筋施工
  • 内装仕上げ
  • 表装
  • 建築大工
  • 建築板金

業務区分としての土木と同様に、統合後において建築の資格を取得した特定技能外国人は、上記業務の全てを行うことが可能です。

業務区分【ライフライン・設備】

業務区分としてのライフライン・設備は、指導者の指示監督を受けながら、電気通信・ガス・水道・電気その他ライフラインの設備整備や設置、変更又は修理に係る業務とされています。代表的な業務例は次の通りです。

  • 電気通信
  • 配管
  • 建築板金
  • 保温保冷

ライフライン・設備の資格を取得した特定技能外国人が、上記の業務全てを行えることは、土木や建築の場合と同様です。

製造業分野の新業務区分(3区分)の詳細

建設業における特定技能と同様に、製造業でも細分化された特定の区分で資格を取得しても、他の区分の業務を行えないことは同様でした。統合前の業務区分は、多能工を求める製造業の現場ニーズに沿った制度であったとはいえないため、今回の統合によって、ニーズに沿った制度に再編成されています。

統合後の業務区分は、それまでの19区分から「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3つの区分に大別再編されています。それまで所持していた資格の属する区分の業務であれば、他の業務も行えることは建設業の場合と同様です。

業務区分【機械金属加工】

新区分である機械金属加工は、素形材製造や機械製造に必要な材料、工場内の安全性に関する知識経験等に基づく加工技能及び安全衛生の点で共通性が見られる業務が含まれます。機械金属加工に含まれる業務範囲は、具体的には次の通りです。

  • 鋳造
  • ダイカスト
  • 金属プレス加工
  • 工場板金
  • 鍛造
  • 鉄工
  • 機械加工
  • 仕上げ
  • プラスチック成形
  • 溶接
  • 塗装
  • 電気機器組立て
  • 機械検査
  • 機会保全
  • 工場包装

機械金属加工の資格を取得した特定技能外国人であれば、上記の業務全てに従事できます。この点は、建設業の場合と同様です。このように共通性のある業務を1つの機械金属加工という資格の枠内に収めることで、多能工が求められる現場のニーズを満たすことが可能となりました。

業務区分【電気電子機器組立て】

電気電子機器組立ての業務範囲には、電気電子機器や部品、工場内の安全性に関する知識経験等に基づく、加工技能及び安全衛生等の点で共通性が見られる業務が含まれます。具体的に電気電子機器組立てに含まれる業務範囲は次の通りです。

  • 機械加工
  • 仕上げ
  • プラスチック形成
  • 電気機器組立て
  • 電子機器組立て
  • プリント配線板製造
  • 機械検査
  • 機会保全
  • 工業包装

電気電子機器組立ての資格を取得した特定技能外国人であれば、範囲内の業務全てが行えることは機械金属加工と同様であり、電気電子機器組立ての業務区分においても多能工のニーズを満たすことが可能となっています。

業務区分【金属表面処理】

金属表面処理の業務範囲には、表面加工に用いる薬品や工場内の安全性に関する知識経験等に基づく、加工技能及び安全衛生等の点で共通性が見られる業務が含まれます。具体的に金属表面処理に含まれる業務範囲は次の通りです。

  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理

金属表面処理の資格を取得すれば、上記いずれの業務も行えることは、機械金属加工や電気電子機器組立てと同様です。

試験区分も3つに統合、変更点を解説

建設業と製造業ともに、業務区分が3区分に統合されたことに伴って、試験区分も同様の3区分に統合されています。ただし、2022年度中の製造業分野特定技能1号技能評価試験では、統合後の3区分ではなく、統合前の19区分のままで試験が行われることに注意が必要です。(建設業は新旧区分双方で受験可能)

建設分野特定技能1号技能評価試験の変更点

統合後の特定技能1号技能評価試験に合格すれば、土木や建築、ライフライン・設備といった選択した資格の範囲に含まれる業務の全てに従事することが可能となります。

2022年度中の学科試験は、30問の真偽法及び2~4択形式で60分間の新旧区分共通試験と、20問の真偽法及び2~4択形式で40分間の新区分試験いずれかを選択することが可能です。

実技試験は、旧区分新区分ともに選択した科目ごとに行われ、問題数や試験時間、合格基準等は、選択した科目によって定められています。

製造業分野特定技能1号技能評価試験の変更点

統合後の特定技能1号技能評価試験に合格すれば、機械金属加工や電気電子機器組立て、金属表面処理といった選択した資格の範囲に含まれる業務の全てに従事することが可能となることは、建設業と同様です。

学科試験は、3区分共通の区分共通問題と区分に応じた選択問題で構成されます。選択問題は、機械金属加工においては15科目、電気電子機器組立てにおいては9科目、金属表面処においては2科目から選択することになります。

実技試験は、統合前と同様に19科目から選択する形式となり、難易度は統合前と同程度が予定されています。

おわりに

2019年4月から受け入れ可能となった在留資格である特定技能ですが、創設されたばかりということもあり、現場のニーズや実態に沿っていない部分も見られました。それが今回の業務区分統合により、共通性のある業務であれば、柔軟に就労が可能な在留資格に再編され、現場のニーズを満たし、実態に沿った運用が可能な在留資格となっています

特定技能は、国内で人材確保の難しい産業分野における即戦力として期待されている在留資格です。特定技能外国人は、今後も建設業や製造業を中心とした日本における労働力が不足している産業分野において、重要な地位を占めてくることが予想されます。

また、特定技能外国人を活用するためには、制度の正確な理解が必要です。当記事では、統合された建設業と製造業の新業務区分について試験内容の変更も併せて、解説を行ってきました。これから特定技能外国人の受け入れを検討している企業担当者は、当記事を参考に制度の正確な理解に努め、特定技能外国人の活用を行ってください。

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