フィリピン(フィリピン共和国・Republic of the Philippines )は、面積29万 9,404 km2と、日本の約8割ほどの国土を保有する国です。形状は日本のように大きな一つの島と小島ではなく、ルソン島、ミンダナオ島をはじめとする7,641の島々から成り立っているため、地形は大変複雑な印象です。
人口は1億98万人。東京からは約四時間で到着できる大都市・マニラを首都とし、古くは江戸時代から日本との貿易の歴史を持つ、我が国にとって「距離の近い国」といえます。
フィリピンならではの文化的特徴は、植民地となった歴史を経ているため、ヨーロッパ (スペイン)とアメリカ、そしてアジアと、西洋・東洋が入り混ざった独特の生活様式とカルチャーを持っていることです。
当記事では、そんなフィリピン人を雇用する際に知っておきたい国民性や文化、日本との違いや共通点をご紹介していきます。
フィリピン人の国民性や文化の特徴は?:ホスピタリティ精神を持ち、日本に親しみを持つ人々
フィリピン人の採用を考えるにあたって、フィリピン人の国民性や文化について知ることは大切です。異なる文化をもつ人材の行動の背景について理解を深めることで、コミュニケーションが円滑になり、余計な衝突を避けることもできるからです。
この項では、フィリピン人の国民性や文化的特徴について以下のトピックにまとめてみました。
フィリピン人の国民性は親切・丁寧で、ホスピタリティ精神に溢れる
フィリピン人の国民性は、親切で丁寧、そしてホスピタリティ精神に溢れた人が多いと言われています。
その理由のひとつは、フィリピン人全体の約93%がキリスト教徒、うち83%がローマカトリック教徒であることが関係していると考えられます。
キリスト教の教えにある、「誰にでも自発的に思いやりをもって接する」西洋的なホスピタリティは、どちらかというとコミュニケーションに内気な日本人とも相性が良いのではないでしょうか。
実際、多くのフィリピン人はフレンドリーな気質を持ち、初対面でも積極的に親しみを表現してくれますから、フィリピン人を採用することで職場の雰囲気が明るくなったという話も見聞きします。
日本に好感を持っているフィリピン人が多数
次に、フィリピン人が日本人についてどう思っているかを調べてみました。
アウンコンサルティングによる親日度調査(2019年実施)のアンケート結果を見ると、「日本という国が好きですか?」という質問に対して、「大好き」と答えたフィリピン人が75%、「好き」が25%で、「嫌い」と答えた方は0%でした。日本に対して好感を持っているフィリピン人が多いようですね。
フィリピンにとって日本は最大の輸入国であり、長きに渡り貿易・インフラ・建設面とさまざまな面で協力関係にあることも理由のひとつと考えられます。
また、個々人の視点でも、四季があり、食べ物が美味しく、テクノロジーも発達している日本に対して、好感とリスペクトを抱いているフィリピン人は多い様子です。日本人としては大変有難いことですね!
参考:【世界13カ国の親日度調査 vol.1】 ~日本に対する好感度、旅行中の不満は?~
フィリピンの就業時間は9時〜18時。しかし日本との大きな違いも!?
フィリピンの就業時間について調べると、多くの職場で9時から18時くらいとされ、日本とほぼ変わらないスケジュールで働いていることを想像します。
しかし、実はここには落とし穴があり、日本人とフィリピン人では時間の感覚に大きな違いがあるのです。
一般的なフィリピンの職場では、9時に始業の場合、9時に出社しているのは半分以下が当たり前だそうで、時間に関して細かく気にしない文化を持っているとのことです。これは「フィリピンタイム」と呼ばれたります。
時間厳守の感覚を持つ日本人からすれば厄介な習慣ですが、フィリピンでは公共交通機関(バス・電車など)にも、なんと時刻表がありません。
プライベートでの待ち合わせはもとより、公共機関やビジネスシーンでも、時間ちょうどに待ち合わせて行動しなければならないという価値観が薄いため、日本人から見るとギャップを感じる場面があるかも知れません。
フィリピンと日本の文化の違いや共通点は?
さて、フィリピンと日本の共通点を前項までを参考にまとめてみると…
- 親切で丁寧、思いやりの心を持っている優しい国民性
- 日本が好きで、お互いの国の印象が良い
ことが挙げられます。宗教の違いなどもあり、普段の振る舞いに違いが多そうな印象ですが、他者への思いやりが深いなどの共通したメンタリティも感じられます。
また、内面だけではなく、見た目にも優しい雰囲気のある彼らは、日本人から見て馴染みやすい存在と言えるのではないでしょうか。
次に、フィリピン人が日本人と大きく違う点をピックアップすると、
- 時間への価値観が異なる(フィリピンタイム)
ことが挙げられます。フィリピン人を職場に迎えた際には、習慣の違いを意識して、柔軟性を持った労務管理が必要となるかもしれません。
昨今では、日本国内にもフレックスを取り入れる企業が増えるなど、タイムマネジメントを働く人の裁量にある程度任せることも増えてきました。従来の日本的な時間厳守が絶対に正しいとするのではなく、柔軟にフィリピン人雇用者と対話し、彼らの意見を取り入れることも必要でしょう。
フィリピンでのフィリピン人の賃金はどのくらい?
さて、フィリピン人の国民性や文化、日本との違いについて学んだところで、実際にフィリピン人を採用して一緒に働くことをイメージしてみましょう。
採用を考えるにあたって、気になるのはやはりお金のことではないでしょうか。
フィリピン人の最低賃金は、月給で約3万円程度
そこで、現在のフィリピンの世相を知るべく、2022年5月にフィリピン労働雇用省(DOLE)が発表した報告を読んでみました。
上記によると、マニラ首都圏の非農業部門の最低賃金(日給)は570ペソ、農業部門は同533ペソとなっています。1ペソは約2.4円(2022年10月現在)ですから、農業以外に従事する人の日給でも1,368円ということです。
これをざっくりと20日の月給に換算すると、27,360円。つまり、最低賃金でひと月働いて約3万円程度の収入というデータになります。
近年では、生活必需品や日用品、石油製品の価格上昇の影響もあり、フィリピン各地で賃金は少しづつ賃上げの動きが出ていますが、庶民の生活は楽になっているとは言えない様子です。
一方で、フィリピンは世界最大の労働力輸出国と言われ、海外出稼ぎ労働者は約1,000万人にのぼります。なんと、この数字は国民の10人に1人となり、多くの人材が積極的に他国に出て外貨を稼ぐことで、自国の生活と経済を支えていることが分かります。
まとめ:フィリピン人を採用する上で押さえたいこととは?
企業で実際にフィリピン人を採用した場合には、習慣、考え方、コミュニケーションについて問題が生じることも可能性として考えられます。
先の例で挙げたような、フィリピンタイムなどの習慣によるギャップもありますし、年末調整や健康診断など、日本独自のルールや習慣の対応に戸惑う人も多いでしょう。
また、フィリピン人は争いを好まない気質があり、和気あいあいと、みんなで楽しく仕事をするのを良しとします。それとは逆に、上司であっても「人前で怒られること」には強い抵抗感を覚えるようです。
なので、雇用したフィリピン人に注意したい場合は別室に移動して、頭ごなしに怒るのではなく対話での解決を意識するのが賢明です。
フィリピン人が気分を害さず、萎縮しない環境づくりを心がければ、彼らの「持ち前の明るさ」という長所が発揮され、ポジティブな雰囲気の職場となるでしょう。
フィリピン人を雇用する際は、POEAとPOLOと呼ばれる機関を通した手続きが必要です。フィリピンでは受入先機関が認定送出機関からの紹介を受けずに、直接フィリピン人を雇用することは原則として禁止しています。雇用の際にはPOEAとPOLOの手続きが必須である点に注意してください。POEAとPOLOについては以下の記事で詳しく解説しています。
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おわりに
当記事では、フィリピン人の国民性や文化の特徴や、フィリピン人を採用するにあたって知っておきたい日本との違いや共通点についてご紹介しました。ぜひ、フィリピン人を職場の新たな戦力として迎えてみてはいかがでしょうか?