2019年4月に創設された特定技能制度。その中でも宿泊業界においても人材不足が深刻化しており、特定技能制度の分野の1つに含まれています。一定の専門性を有した外国人人材を採用したい宿泊施設は多いのではないでしょうか?
この記事では、宿泊分野の特定技能外国人の要件や雇用を検討する企業が留意すべきポイントを解説。注目を集めつつある特定技能「宿泊」の魅力を紹介します。
特定技能「宿泊」の概要
特定技能「宿泊」は、日本の宿泊業界での外国人材の受け入れを促進するために設けられた在留資格です。日本の宿泊業における人手不足を補うため、一定の技能と知識を有する外国人を受け入れることを目的としています。
制度創設当初は、特定技能1号のみが創設されていましたが、令和5年の閣議決定により、宿泊部分野にも、新たに特定技能2号が追加されました。2023年より、特定技能2号の取得のための試験が開始されています。
宿泊業に従事する人材の現況
日本の宿泊業界は、コロナ禍による打撃から徐々に回復しています。2023年には、訪日外国人旅行者数は2019年の8割近くまで回復しました。2024年にはインバウンドがさらに回復し、国内外の旅行需要が増加する見込みとなっています。
また、2024年以降、第三次ホテルブームが到来すると見られています。東京を中心に新規ホテルの建設ラッシュが続いており、業績回復の強い追い風となっています。しかし、人材不足や労働生産性の低さが依然として大きな課題となっています。
参照:国土交通省 観光庁 訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移
特定技能「宿泊」の対応可能な業務
特定技能「宿泊」では、外国人人材に以下の業務を従事させることが可能です。
業務種別 | 業務内容 |
接客業務 | ・チェックイン・チェックアウト
・お客様への周辺観光地の案内 ・館内の案内 |
レストランサービス業務 | ・食事の配膳や片付け
・料理の下処理や盛り付け |
企画・広報業務 | ・キャンペーンの計画
・ホームページでの情報発信やSNSの運用 |
接客業務 | ・お客様対応全般 |
これら業務に加えて、館内の備品点検や客室清掃などの単純労働も付随的な範囲であれば従事することが可能です。
他の在留資格との違い
宿泊施設では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持った外国人も活躍しています。この在留資格は、学術的素養を土台とした業務に従事させることが可能です。また、清掃業務をメインに従事させたい場合には、特定技能「ビルクリーニング」を満たす人材の雇用も選択肢に入れましょう。
特定技能「ビルクリーニング」の詳細は以下の記事をご参照ください。
参照:特定技能「ビルクリーニング」の概要・雇用する際に押さえておくべきポイントを解説!
特定技能1号「宿泊」の人材要件
特定技能1号「宿泊」を取得するには、どのような要件を満たす必要があるのでしょうか。
- 特定技能評価試験に合格
- 日本語試験に合格
- 技能実習2号からの移行
ここでは上記3点の主な要件を解説します。
特定技能評価試験に合格
宿泊分野の特定技能評価試験は、宿泊業技能測定試験とも呼ばれ、特定技能1号を取得する要件の一つとなっています。特定技能評価試験は、特定技能の全12分野で実施されている一定の専門性と技能を証明する試験です。
宿泊技能評価試験の詳細情報
宿泊業技能測定試験の出題分野は以下の5分野です。
- フロント業務
- 広報・企画業務
- 接客業務
- レストランサービス業務
- 安全衛生その他基礎知識
筆記試験および実技試験それぞれで、正答率65%以上が必要です。
受験資格は、以下2つを両方満たしていることが求められます。
- 試験日において、17歳以上の者
- 日本国内で試験を受験する者にあっては、在留資格を有する者(※インドネシア国籍の者は18歳以上)
試験場所は、日本国内各地および、海外では東南アジア諸国を中心に開催されています。最新の開催日程は公式サイトをご確認ください。申し込みについては、一般社団法人宿泊業技能試験センターから行います。
日本語試験に合格
特定技能1号を取得するためには、日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格が必要です。既に日本語能力試験N4以上を取得している場合は、この試験を再度受ける必要はありません。
技能実習2号からの移行
特定技能「宿泊」においては、技能実習2号からの移行も可能です。技能実習2号を良好に修了した場合、特定技能1号の試験を受ける必要はありません。ただし、移行先の職種が異なる場合は、日本語能力試験は免除されますが、特定技能の技能試験は受ける必要があります。
移行には在留資格変更許可申請が必要で、技能実習修了証明書や実技試験合格証明書などが該当します。必要な書類は地方出入国管理局に提出し、審査には1〜2か月かかるため、事前の手続きの全体の流れを理解しておくとよいでしょう。
特定技能2号「宿泊」の人材要件
宿泊分野においては、特定技能2号「宿泊」もあります。この在留資格を得るには、少なくとも2年以上の実務経験が必要です。宿泊施設において複数の従業員を指導しながらフロント業務、企画・広報業務、接客業務、レストランサービス業務などを行った経験が含まれます。
また、宿泊分野特定技能2号評価試験に合格する必要があり、即戦力として業務に従事できることを証明する水準であるといわれています。
特定技能「宿泊」を雇用する企業に求められる要件
特定技能「宿泊」の人材を雇用する企業は以下の条件を満たす必要があります。
- 宿泊分野特定技能協議会に加入する
- 旅館業法の許可を受けている
- 支援体制を整備する
採用を進める際には、候補者のみならず、自社の雇用体制も整備しておくことが求められます。条件の詳細を解説します。
宿泊分野特定技能協議会に加入する
宿泊分野特定技能協議会は、特定技能外国人の適正な受入れおよび、保護を行うことを目的としています。特定技能外国人を受け入れる宿泊施設や特定技能外国人支援計画の実施を委託されている登録支援機関は、この協議会の構成員となる必要があります。
初めて特定技能外国人を受け入れる企業は、受入日から4か月以内に協議会に加入する必要があります。入会の申し込み、申請手順は国土交通省 観光庁をご確認ください。
旅館業法の許可を受けている
特定技能「宿泊」外国人を雇用するためには、企業は「旅館業法」に基づく許可を受けている必要があります。この許可には、旅館営業、ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の4種類がありますが、特定技能外国人を雇用するためには「旅館営業」または「ホテル営業」の許可が必要です。
旅館業法の許可を取得するには、都道府県知事(または政令指定都市の市長)の許可や、旅館業法で定められた構造設備基準を満たす施設が必要となります。
支援体制を整備する
宿泊分野の特定技能外国人に関わらず、支援体制を整備することは外国人の雇用で重要なポイントです。雇用企業は、法律で定められた支援体制を自社で構築するか、その全てまたは一部を登録支援機関に委託するかを選択しなければなりません。
社内で支援体制を構築するには、過去2年間の外国人受け入れの実績が求められます。初めて外国人の受け入れを行う企業は、登録支援機関へ委託し、連携を強化しながら外国人の受け入れを進めていきましょう。
特定技能「宿泊」の人材を雇用する際の注意点
特定技能外国人を雇用する企業の要件と合わせて、注意点もいくつか紹介します。
- 風俗営業法(風営法)に該当する施設でない確認する
- 受け入れ人数に留意する
これらの詳細を解説します。
風俗営業法(風営法)に該当する施設でない確認する
風俗営業法の規定により、ラブホテルなどの施設では特定技能外国人を雇用することはできません。また、風俗営業法に規定される接待業務も特定技能の対象外となります。
風営法違反が発覚した場合、厳しい罰則が科せられるため、風営法に該当しないことを事前に確認しておきましょう。
受け入れ人数に留意する
宿泊分野においては、企業ごとに受け入れ人数の上限は設けられていません。現状、建設分野、介護分野は、受け入れ先施設の常勤職員数を上限としています。今後、宿泊分野に受け入れ人数の上限を設ける場合には、これに準ずる形となる可能性があります。
宿泊分野全体の特定技能外国人の受け入れは、令和6年度からの向こう5年間の受入れ見込み人数は、最大で23,000人を上限としています。
宿泊分野の特定技能を活用しましょう!
アフターコロナの影響もあり、国内の観光業の需要も回復しつつあります。また、今後のインバウンド需要の増加に伴い、ますます注目されつつある宿泊産業において、外国人人材の活躍が期待されています。宿泊分野の特定技能外国人を雇用し、人材不足の解消を改善しましょう。
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