昨今、日本の人材不足が深刻化しつつある中で、外国人を採用する企業が増えてきています。外国人を雇用する法整備が進められる中でこれから採用を考える企業も多いのではないでしょうか?
何から始めれば良いか分からない企業の担当者向けに、この記事ではビザの申請方法から労働許可、労務管理の実務まで、外国人を採用する上での法的要件や最新の政策変更について分かりやすく説明します。グローバルな人材を活用して、企業の競争力を高めましょう。
外国人採用の流れ
日本人を採用する場合にも共通しますが、まずは一般的な採用の流れについて確認していきましょう。
求人募集
まずは採用候補者を集めます。エージェントに求人掲載を依頼する場合が多いと思いますが、自社の採用したい人材にマッチングするサービスを選定するようにすることが重要です。
内定
候補者を選定したのちに、書類選考や面接を通じて、最終的に内定を出す人材を選出します。このフェーズでは、面接や内定後のフォローを自社でどの程度介入するか事前に検討しておくことで、採用フェーズの業務の効率化につながります。
調査
調査は、候補者の個人情報や在留資格が応募職種に適合しているかなど確認する必要があります。不法就労にならぬよう、候補者とコミュニケーションを取りながら間違いのないように進めていきましょう。
ビザ申請
雇用契約書の作成後にビザを申請しましょう。ビザは入国管理局が審査するため、数カ月時間がかかることがあります。また、ビザの変更が必要な場合もあるため、余裕をもって準備を進める必要があるでしょう。
雇用開始
ビザを取得できたら雇用を開始できます。在留期間の更新はその都度忘れずに対応する必要があります。雇用開始に伴い、同僚となる社員や上司を含めて社内環境を整備しておくことも重要です。
入社前にすべき手続き
外国人を採用する際の入社前に行うべき手続きについて解説します。
在留資格の確認・変更
採用人材については、在留資格の有無および保有している在留資格の活動内容が認められる業務がどうかを確認する必要があります。在留カードの「就労制限の有無」と「資格外活動許可欄」の記載を確認し、変更が必要な場合は対応しましょう。在留資格の変更や申請が必要な場合を解説します。
転職する場合
これまで日本で就労していた外国人を雇用する場合は、ビザの変更を行う必要があります。本人が今持っている在留資格で、転職先の業務ができるのかを確認しましょう。認められていない業務を行った場合は不法就労となり、罰せられる可能性もあるため要注意です。
手続きの流れとしては、前職と同じ業務の場合でも、就労資格証明書交付申請を行います。(任意)そして、特定技能外国人の中でも前職と異なる場合は、在留資格変更許可申請が必要です。
留学生の場合
留学生を新卒で採用する場合には、留学ビザから就労ビザへの変更を申請する必要があります。雇用される本人が最寄りの地方出入国管理局やその出張所へ出向き在留資格の変更申請を行いましょう。通常数カ月、申請の完了までに時間がかかります。
現地採用する場合
現地採用する場合は、内定企業が出入国管理局に在留資格認定証明書を申請し、海外在住の求職者に送付します。雇用される本人が日本大使館へ就労ビザを申請することで、手続きが完了します。こちらも申請完了までに数カ月程度かかります。
雇用契約書の締結
内定手続きの中で重要なのが、雇用契約の締結です。雇用契約書または労働通知契約書を用意し、契約を交わしましょう。この書類は就労ビザの申請にも必要となる書類です。
また雇用契約は入社後の外国人人材とのトラブル防止にもつながります。外国人の理解のために母国語で作成したり、停止条件などを綿密に記載しておくことをおすすめします。
雇用契約書と労働通知契約書の違いとして、雇用契約書は、双方の合意が必要であるのに対し、労働通知契約書は、雇用者から労働者への一方的な通知となります。また労働基準法によると、労働通知契約書の発行は義務となりますが、雇用契約書は義務ではありません。
入社後にすべき手続き
外国人が入社した後に行うべき手続きや対応について解説します。
雇用保険への加入
まず、日本人の採用と同様に雇用保険の加入手続きが必要です。雇用保険に加入する際、外国人労働者の氏名、生年月日、性別、国籍、在留カード番号などの基本情報を記入する必要があります。また、雇用形態や就労経路、週の所定労働時間などの詳細も必要となります。
必要書類の中の雇用保険の被保険者資格取得届は、新たに外国人労働者を雇い入れた場合、翌月10日までに提出することが義務付けられています。
健康保険・厚生年金への加入
外国人従業員も日本人と同様に、常時雇用されている事業所の従業員は、国籍や性別、賃金の額に関係なく、健康保険と厚生年金保険の両方に加入する必要があります。一定の例外もありますが、一般的には全従業員が対象です。
事業主は、新しく雇用した従業員が加入する際に「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出します。従業員は基礎年金番号通知書を受け取り、必要な場合は「健康保険被扶養者(異動)届」も提出します。これにより、被扶養者資格も認められ、関連する健康保険証が交付されます。
出入国在留管理庁へ届出
外国人雇用者が退職及び転職した場合には、14日以内に出入国在留管理庁に届け出る必要があります。在留資格の種類によって、契約機関に関する届出または、活動機関に関する届出を届け出る必要があります。
種別 | 対象となる在留資格 |
活動機関に関する届出手続 | 中長期在留者のうち「教授」、「高度専門職1号ハ」、「高度専門職2号」(入管法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄2号ハに掲げる活動に従事する場合)、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「教育」、「企業内転勤」、「技能実習」、「留学」又は「研修」 |
契約機関に関する届出手続 | 中長期在留者のうち「高度専門職1号イ」、「高度専門職1号ロ」、「高度専門職2号」(入管法別表第1の2の表の高度専門職の下欄2号イ又はロに掲げる活動に従事する場合)、「研究」、「技術・人文知識・国際業務」、「介護」、「興行(本邦の公私の機関との契約に基づいて活動に従事する場合に限ります。)」、「技能」又は「特定技能」 |
採用手続きにおいて注意すべきこと
採用手続きの中でも注意すべきことを下記にまとめます。
- 就労ビザの審査期間を考慮すること
- 同一労働・同一賃金を守る
- 在留資格の範囲内の業務に従事させる
- 在留期限が切れていないか確認する
これらを見落としてしまうと、知らず識らず法律に抵触してしまう可能性もあります。詳細を解説します。
就労ビザの審査期間を考慮すること
就労ビザの申請から許可までの時間は、通常数週間から数ヶ月かかることがあります。この期間は、申請するビザの種類や申請書類の正確さ、出入国在留管理局の処理能力によって変動します。
また、申請時の書類に不備があると、審査期間が延長する可能性があります。ビザの種類によっては更新時にも同様の手続きが必要であり、常に最新の情報を把握しておくことが求められるでしょう。
同一労働・同一賃金を守る
日本で外国人を採用した際には、「同一労働・同一賃金」の原則を遵守しなくてはなりません。労働者が担当する職務内容とそれに対する報酬が明確であることが重要です。外国人労働者に対しても、日本人労働者と同様の業務には同等の給与を支払う必要があります。
また、国人労働者が日本の労働文化と異なる背景を持つことを考慮し、適切な研修や支援を提供することで、彼らが職場に溶け込みやすくするための配慮が必要です
在留資格の範囲内の業務に従事させる
日本で外国人を採用する際には、その外国人の在留資格に許された業務範囲内でのみ従事させることが重要です。外国人の在留資格は、特定の職種や活動に限られており、例えば「技術・人文知識・国際業務」の資格では、技術や国際業務に関連する具体的な職種にのみ従事可能です。
外国人を採用する際は、彼らのビザの種類とそれに基づく許可されている業務内容を正確に理解し、適切に管理することが求められます。
在留期限が切れていないか確認する
日本で外国人を採用した際には、採用候補者の在留期限が切れていないかを確認することが重要です。
期限が近づいている場合や、採用後に期限切れが予想される場合は、就労開始前に在留資格の更新や変更申請の手続きを行う必要があります。在留期限の3ヶ月前から可能ですが、遅くとも期限切れ前には完了させるべきでしょう。
違法な雇用は罰せられる場合も
採用手続きにおいては、法に遵守した手続きを遂行することが求められます。法に違反すると企業や雇用者は罰金やその他の法的制裁を受ける可能性があります。正確なビザの取り扱いと法的遵守を確実にするため、外国人労働者の雇用には特に注意が必要です。
初めて外国人雇用を検討する企業は、外部の専門家にアドバイスを受けるなど正しい情報のもと適切に手続きを進めていきましょう。
正しい手続きで外国人人材を採用しましょう!
外国人の採用は、日本で増えつつある中で外国人雇用の法規制も更新されています。情報のキャッチアップを怠らず、正しい手続きを遂行していくことが大切です。また、外国人を採用して目的完了ではなく、優秀な外国人を採用したい企業は、社内の受け入れ体制を整備し、入社後の教育に注力していくこともポイントです。
外国人の採用や雇用でお困りの方はプロに相談してみることをおすすめします。
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